排出される二酸化炭素より「余計な」本

ペダリスト宣言!―40歳からの自転車快楽主義 (生活人新書)ペダリスト宣言!―40歳からの自転車快楽主義 (生活人新書)
(2007/12)
斎藤 純

商品詳細を見る


ブームも手伝って自転車に関する本の出版が多いようだが、
自分の自転車経歴をダラダラ披瀝するにとどまる内容が少なくない。

こちらの本もその典型。
シクロクロスからフォールディングへ、そしてロードレーサーへ。

それはそれで自転車の読み物として成立しているのだが、。
話は「都会の水質問題」(pp74-75)、
さらには「絵の具」(pp76-77)にまで飛躍していく。

エッセイとは多分に横道にそれる傾向が高いが、
ここだけでなく、あまりにそれが多いと、
何の本だか読者がわからなくなってくる。

極めつけは「音楽」だ。
著者は、自転車に乗ることによって聴く音楽の趣向が変ったという。
そして話は古楽器にまで及んでいくのだが、
この辺の話題だけで2ページから3ページを費やす。

「紙幅に限りがある」
と何度も繰り返し述べているのに、
いたずらに紙面を費やしている愚行。

さらに調子に乗った著者は、
いわゆる環境問題にも触れていくのだが、
これがまた「紙幅を費やす」だけの空疎な内容に終始。

今どき地球温暖化を
「地球が暖かくなり、氷がとけて、海抜0メートルの島がなくなる」
という程度の認識しか持っていない人はいないと思う
(p178)


と自らの環境意識の高さを披露しようとしてはいるが、
その後に書かれているのは新聞やテレビでよく報道されている
環境の一般問題の「切り抜き」でしかない。

というか、「南の島がなくなる」ことだって、
相当重要な環境問題なんじゃないだろうか。

そして、環境に対する自らの実践のひとつが
「プリウスに乗ること」だというのだから、
もう失笑するしかない。
それほど環境問題にセンシティブであるのなら、
自動車そのものに乗るべきではない。

しまいには『クリンキディの話』という物語(詩?)まで詠みつつ、
自己陶酔の境地に入っていく。(p181)

環境問題に言及するあまり、
自分が書いているのが自転車の本であることを忘れてしまったようだ。


プロフィールによれば、
著者は盛岡生まれで、現在も在住しているという。

だとしたら、本書でも少しだけ触れられてはいるが、
盛岡のような地方都市で自転車をいかに活用するか、
これにもっと「紙幅を割く」べきであったろう。

ヨーロッパの、とりわけ中小の都市においては、
CBD(中心街)から車を締め出し、
路面電車と自転車と歩行者のみが通行できる交通体系を採用しているところが増えている。

だとしたら、いの一番に「自転車都市」を確立できるのは、
東京のような大都市ではなく、
盛岡のような地方都市なのではないか。

この筆者は、それに気がついていながら、
やたら音楽だの水だの、
それこそインクと紙という資源を
浪費する内容だけでこの本を作ってしまった。

彼のように、書いているうちに自分の文章に陶酔してしまい、
あらぬところに走ってしまう人は珍しくない。
それを修正してタイトな文章構築を手がけるのが編集者の仕事のはずだが、
どうやらNHK出版の担当者にその技量はないらしい。


図書館で借りれば、それで十分な本です。

コメント

非公開コメント

月別アーカイブ

ユーザータグ

サイクルレーン ブロンプトン 輪行 駐輪場 ロンドン レンタサイクル 自転車の安全 シェアサイクル イギリス 東京 Bike Backstreets Tokyo Tour タイ 政策 バンコク 静岡 ラオス 八丈島 交差点 ラレー サイクリング 浅草 大阪 渋谷 自転車ナビマーク 自転車道 マレーシア ビエンチャン サイクルカフェ 運河 クアラルンプール ポタリング ソウル 歩道 アイルランド ダブリン 恵比寿 シェア・サイクル 自転車レーン ウィリエール ルアンパバーン ジャイアント 自転車横断帯 韓国 横浜 サイクル・スーパーハイウェイ 名古屋 札幌 スーパー・サイクルハイウェイ バンプ 清水 江東区 甲府 放置自転車 岡山 北アイルランド サイクルツアー 金沢 横浜ベイバイク BMW 折りたたみ自転車 富山 大井川 栃木 三浦半島 秋葉原 川越 仙台 立川 筑波鉄道 つくばりんりんロード オランダ 福井 武蔵小金井 銀座 ボリスバイク まちのり 川崎 ペダル 新宿 ストラトフォード・アポン・エイボン ベルファスト サイクリングロード ヘルメット 日本 バイク パレス・サイクリング 映画 信号無視 Cycle 歩車道 神奈川新聞 ノーンカーイ ナローボート ウドムサイ 米子 ちはやふる 沖縄 谷中 東京下町 ポロクル 下町 小径車 潮来 ミニベロ 霞ヶ浦 DATE BIKE 事故 埼玉 千代田区 台北 茨城 ロードバイク カメラ ウェアラブルカメラ マーチ contour 自転車活用推進研究会 mAAch 自転車活用推進議員連盟 四輪自転車 新川崎 本町通 COIDECO 武蔵小山 東京オリンピック2020 コイデコ ハブチャリ 自転車議員連盟 東京オリンピック・パラリンピック パンパン 信濃町 Raleigh 国立 コミュニティ道路 三輪車 アムステルダム 軽車両 不忍通り 早稲田大学 千石一丁目 白山通り 東新宿 自転車カフェ 札の辻 メッセンジャー T-Serv トライショー マラッカ 自転し通行指導帯 えちぜん鉄道 岩瀬浜 天現寺橋 GIANT 目黒通り 環状7号線 歩道上 西新井 けやき通り 六本木 飲酒 バス ナビマーク ゾーン30 奄美大島 バックミラー グリップ 東京ミッドタウン 下部温泉 身延線 名瀬 高崎 大井川鉄道 酒酔い 琴似 通勤 沼津 スイクル Work to 逆走 ももちゃり 疋田智 Suicle かえで通り バッグ 羽生 利根川サイクリングロード シマノ SPD 京都 博多 福岡 有栖川有栖 教育 亀戸 東急線 宇都宮 渡れない交差点 修理 ブラッドフォード・オン・エイボン Network マッカーサー道路 湖水地方 長原 旗の台 ベイバイク 千歳烏山 宮古島 茅ヶ崎 相模原 武蔵小杉 野川サイクリングロード 両国 National ナショナル・サイクル・ネットワーク 淡路島 自転車行政 一方通行 御坊 和歌山 しまなみ海道 足立区 仁川国際空港 中国 上海 警察 取り締まり ママチャリ 道路管理部 建設局 スイス 盛岡 東京都庁 フランス 焼津 池上 社会実験 淀川 水戸 ダッチバイク 竹富島 上尾 荒川サイクリングロード 枚方 Loro メンテナンス ダホン 浜名湖周遊自転車道 Tarzan Pen 御船かもめ クルーズポタ 雑誌 世田谷区 トゥパス 安全教室 自転車と旅 タルタルーガ 歩行者の安全 ブログ【】が記事「」をアップしました。 コミュニティサイクル スーパー・サイクルハイウェイ ボウ・エンド 左折 自転車通行指導帯 歩道走行 ロンドン・サイクル・ネットワーク ストラトフォード 商店街 長谷通り 静岡市 本通り 県道354号線 廃線跡 鬼太郎 Shibuya カフェ 四国 大洲 ロシア Anstralia 函館 イギリス運河 伊豆 フォールディング 土浦 石鎚山 伊豆大島 大島 E-bike 電動バイク 星野リゾート ゆめしま海道 伊予西条 小名木川 イベント バーン・カチャオ ABC 那覇 スランゴスレン 深大寺 烏山 大田原 三鷹 宮崎 ルイガノ ヘッドフォン 路面電車 車道走行 ペナン島 名護市 多摩川 分倍河原 ウボン・ラーチャータニー 鎌倉 江ノ島 渋沢栄一 深谷 多摩サイクリングロード 水元公園 柴又 白浜 田辺 コーヒー 青森 弘前 ひたち海浜公園 谷根千 総社 怪談 房総半島 世界遺産 白神山地 東京湾フェリー 東扇島 福島 築地 しながわ区民公園 若洲海浜公園 佃島 Cycling 江ノ電 松山 Hello サイクリングコース 見沼 TUJ いすみ鉄道 フォールディング・バイク 日帰り温泉 印旛沼 花見 隅田川 手賀沼 でらチャリ 瀬戸街道 走行指導帯 曳舟 笹塚 飛行場 龍ケ崎 浜松町 竹芝桟橋 阿見 チェンマイ 琵琶湖 恋瀬川 石岡 BH 津田沼 千葉 彦根 米原 近江八幡 目黒 武里 リッチモンド・パーク 新浦安 坂戸 ウィンブルドン・コモン エレファント&カッスル CS2 港区 ラウンドアバウト 若葉 お台場 You 台湾 国道246号線 べイバイク 大泉 南大沢 小倉 中目黒 中川 春日部 一畑電鉄 亀嵩 奥出雲 出雲大社 イングリッシュガーデン 松江 宍道湖 道の駅 砂の器 木次線 タイカブ クリック ウェイブ ポンプ サイクルトレイン 湯野神社 ノックエア 自転車都市 妖怪 水木しげる ラクスマリーナ 芦原温泉 蓮田 あやめ祭り エグスプロージョン カペルミュール 佐野 館林 散走 宮部みゆき 大洗 ガルパン 境港 横浜カーフリーデー ドコモ モールトン 秩父 町屋 虎ノ門